
それはそうと、苗木が1%以下って、ほとんどやってないのと同じじゃない?
僕は、花粉の少ない苗木が1%以下にとどまっているのは、政策が止まっているからではなく、スギ林の植え替えそのものが「50年単位」でしか進まない構造にあるからだと考えています。
「なぜスギは35〜50年も植え替えられないのか?」
それは、森の更新サイクルが50年単位で設計されているからです。
1. 花粉の少ない苗木が「1%以下」という現状の正体

この「1%以下」という数字は、単なるやる気の問題ではなく、日本の森の更新速度そのものを映し出しています。
林野庁の『森林・林業基本計画』を見ると無花粉スギや少花粉スギの苗木供給量が、全体の中で1%以下にとどまっている地域があるのは事実です。
この数字だけを見れば、「対策が進んでいない」と感じるのも無理はありません。僕も最初に見たときは、あまりの少なさに驚きました。
しかし、この数字を読み解くには「母数」を知る必要があります。
- 日本のスギ人工林面積:約440万ヘクタール
- 更新(植え替え):毎年行われるのは、全体のごく一部
新しい苗木を植えるには、まず今ある木を「伐採」しなければなりません。森林経営管理制度などで集約化が進められていても、伐採と再造林のペースが上がらなければ、苗木の割合も増えないのです。
つまり1%という数字は、政策の停滞というより、「森の更新率の低さ」がそのまま表れた結果だと僕は受け止めています。
2. 植え替えを阻む「ボトルネック」の正体

無花粉スギの種子園整備や苗木生産の拡大、再造林への補助金。発生源対策としての制度は、すでにいくつも打ち出されています。
数字だけを追えば、前進している部分もあります。それでも割合が上がらないのは、苗木の問題以上に「植え替えの工程」そのものが詰まっているからです。
ちなみに、林野庁の『森林・林業基本計画』を見ると、スギの標準伐期齢は概ね35〜50年です。
地域や地位条件、材木の用途によって伐期齢は異なり、成長の早い地域では35年前後、一般的には40〜50年で主伐期を迎えます。
さらに、植え替えは、伐採 → 地拵え(じごしらえ) → 植栽という順序で進みます。しかし、現場には多くの壁があります。
- 人手不足:林業の担い手が減少傾向にある。
- コスト増:作業道の整備や木材の搬出コストが上がっている。
- 時間軸:山林所有者の合意形成や、木材価格の安定。
- 成長のサイクル:標準伐期齢がおおむね50年前後という長期スパン。
「予算を増やせば一気に進むのでは」という声もありますが、これらの条件が複雑に重なり合っているため、更新率は急には上がりません。僕には、この「工程の長さと条件の多さ」こそが、最大の壁に見えています。
つまり、スギの植え替えが35〜50年単位になる理由には、森の更新サイクルそのものにあるのです。
3. 「少ない」と感じる私たちと、森の時間の距離

1%以下という数字は、花粉症に悩む人にとっては絶望的に小さく映ります。しかし、ここには避けられない「時間の差」が存在します。
今、私たちが苦しんでいる花粉の多くは、樹齢30年以上のスギから飛んでいます。
つまり、今日無花粉の苗木を植えたとしても、その木が森の主役になるのは30年後。さらに収穫期(標準伐期齢)まで考えれば50年後です。
この時間差が、私たちの「今すぐ解決してほしい」という体感と、政策の歩幅を大きくずらしてしまっているのです。

僕は、意味がないとは思いません。ただ、即効性を期待すると裏切られてしまいます。
1%以下という現在地は確かに小さい。けれど、ゼロではありません。伐採と再造林が進み、無花粉品種の供給比率が上がれば、景色は少しずつ変わっていきます。
花粉症のつらさは、今この瞬間の問題です。だからこそ苛立ちが生まれる。でも、森の時間は50年単位で流れています。
僕は、その時間差を理解したうえで「今、どこの工程が詰まっているのか」を注視し続けることが、発生源対策を前に進めるための現実的な姿勢だと信じています。
詳しくはこちら ▶ 子どもが大人になる頃、花粉は減る?無花粉スギは何年後に広がるのか


コメント